たまたま見たその姿に心惹かれ、勢いでハンガリーから取り寄せてしまったチェコスロバキアのメオプタ社が作ったフレクサレットという二眼レフカメラ。
このカメラについてはチェコスロバキアの歴史とともに語られているサイトも多いので触れないが、なかなか大変な時代に生まれたカメラのようである。
カメラの仕様はめまぐるしく変わったようだが、この個体はテイクレンズ/ビューレンズともBelar 80mm/F3.5で、シャッターはプロンターの1/500秒までのもの。このVI型はAnastigmatのビューレンズと1/400秒までのMetaxシャッターの組み合わせが一般的らしいので比較的珍しいかもしれない。
シリアル番号からすると1967年製。45年前のものだが外観はミントコンディション。機能的にもすべて正常。レンズもきれいで、おまけに一般的なパトローネ入りフイルムも使えるアダプタとファインダーやプロクサーレンズ2組、モノクロ用グリーンフィルター、レリーズ、革ケースまでセットで手に入れた。二眼レフはマミヤC330を持っているが、比べてみるとかなり小さくて軽いのがいい。もちろんフレクサレットはレンズ交換できないけれど、気軽に持ち出すにはいい感じだ。
早速昼休みにトライXを詰めて試し撮りしてきた。
プラナーと比較されて評価が高いBelarレンズだが、なかなかシャープな写りである。
こちらもロープやモップの質感も良く出ているし、ボケ具合もなかなか。
一方で、シャープさだけではなく柔らかな陽射しの雰囲気も良い感じに表現してくれている。
使い勝手でいえば、EVを固定して絞りとシャッタースピードを調整できるのは個人的にとても使いやすい。基本的なEV値さえ覚えておけば露出計を持ち歩く必要がないからだ。まぁこの辺はハッセルも同じなのだが。 セルフコッキングも便利だし、シャッターロックボタンも実用的だ。
一度かばんの中で裏盆が開いてフイルム半分無駄にしてしまったことがあるが、これは開閉ボタンをねじ込んでロックできるのを知らなかった自分の無知。その後はもちろん同じミスは起きていない。
なにより良いのはピントレバー。これは使いやすい。レバーの位置で距離を覚えておけばファインダーを覗かなくてもいいからだ。C330やローライのようなダイヤルだとこれはやりにくい。
ファインダーはフレネルレンズがないので暗いけど、ピントのヤマはつかみやすい。
ちなみにプロクサーのビューレンズ側用はパララックス補正のためレンズが傾いている。最初見たときはレンズが外れているのかと思ってちょっとあせった。
比較的安く手に入る割には安っぽさもなくなかなかかっちりまじめに作られた感じがする。
また黒い2眼レフが多い中でひときわ異彩を放つグレーの布地風張り革も新鮮だ。
手の中でもてあそんでいてもそれなりに満足感のある美しいカメラだが、軽さを生かしてお散歩のお供になるべく持ち出そうと思っている。
時代に翻弄された人々の生活をこのカメラは映し撮ってきたんだろうな、などと訪れたこともない遥か東欧の国に想いを馳せつつ。
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